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【大穢二次創作物】【楽園/大有】









































この世界が僕にとっての楽園であることは、僕自身が一番よく分かっているんです。

灯台で大崎さんを求めたとき、彼はその不埒な誘いをゆっくりと包み込んで、そして愛で以て正しく突き放されました。僕はその時初めて、自分がどれだけ彼を傷つけてしまったのかを知り、すぐに消えてしまいたい気持ちに駆られたというのに、彼は救助が来るそのときまで離してくれなどはしなかった。拒絶ではなく、受容だと分かっていたのに、僕の心はそれを受け入れられるほど冷静ではなくて。ただ、どちらもやさしく、真綿のような罰としか思えませんでした。

救助の混乱に乗じて、大崎さんの前から姿を消して一年。どれだけ日常を過ごそうとしても、あの十年前の日のあとのように、少年から大人になった彼の安否を不安に思うばかりの日々でした。

自分から逃げたのに、なんと白々しいものかと戒めるような声に、そんなことは分かっているのだと、努めて痕跡を残さないよう綺麗にしていきました。職を変え、住処を移し、彼はきっと救助され、何事もなく生きている、もう交わることもない美しく衝動的な初恋のまま、何れ時が解決するのを待ち続け、いつか忘れよう、と。

結局は、あの島での何もなかった頃、自分に都合の良い場所にばかり去来する心を、自覚するばかりでした。
真摯に仕事に取り組んでいるあいだは、そんな思考からも逃れられましたから、仕事への情熱は深まるばかりでした。だから、彼に再会した時、罰というものは決して自分の人生から離れることのない一文字なのだと観念しました。

僕にとっての罰は、大崎さんのかたちをしています。
同時に僕という歪んだかたちは、それを楽園と認識します。罰を痛みとするならば、その痛みさえも倒錯した嗜好が、嬉しく思ってしまうからです。罰という貴方があったとしても、貴方と居られる日々が楽園となってしまうことの恐怖を、僕は既にその時わかっていました。

それでも貴方が帰らないと云うから、僕は貴方に弾劾されることを選びました。その時、罪悪感と期待感が入り混じる心地はその時最も華を咲かせていて、僕は晴天の最中、土砂降りの雨の中のような、惨めな気持ちでした。

あのとき施されなかった口付けに息を乱した僕に、大崎さんが「伴侶にしていただけますか」と言ったとき、とうとう僕のなかではこれが罰であることなんかすっかり忘れて、貴方といる楽園のやさしさに溺れるしかできませんでした。灯台のとき、すでに僕は死んでいて、貴方という罰を経て、楽園に導かれた、仏教的に語るのならこのあたりでしょうか。僕は別に、信じていないので比喩でしかありません。

ここは、やさしくてひどい、楽園のような世界です。
僕が生きている限り、僕のそばに貴方は居続ける。
僕がどれだけ逃げようと、貴方はきっと僕を見つけてしまう。僕の伴侶として、添い遂げるつもりだと、口よりも雄弁に語る貴方の目が、愛しくて、恐ろしいと思いました。

僕のような罪人は、楽園たる世界に居るために、貴方と云う罰が隣にいることを受け入れることによって、この楽園から免罪符を受け取っているのでしょう。だから、どれだけひどくされても構わないんです。
そういう目線を向けたら、訝しげな顔をするんですから、大崎さんは、僕にどう思われているかも全く分からないらしいです。そういうところ、可愛いですね。

結局のところ、僕は罰だろうが貴方を忘れることはできなくて、痛みによって構成されるこの楽園に居ることを選んでしまいました。

本来の意味のような、苦しみのない楽園など、僕には似合わなくて、そちらの方が息が詰まってしまうと思っています。
だから僕は、いつか貴方の手で、貴方の匂いに包まれながら、窒息することが望みです。それ以外の願いはありません。僕の楽園の終わりは、貴方と云う罰がいいです。大崎さん。

【楽園/A√大有】

4/30/2026, 7:27:22 PM