一ノ瀬

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高校に入学して3ヶ月。

クラスの男子が転校した。

莫大な量の課題やあまりにハイペースな授業についていけず、精神がまいってしまったそうだ。

何にも気づいてやれなかった自分に、行動できなかった自分に腹が立って、やるせない気持ちになった。

"ここはそういう学校だから"
"彼にはあってなかったんだよ"

そう言ってしまえばそれまでだが、あまりに薄情すぎやしないか。


彼はとても真面目だった。
きっと全てを完璧にこなさなければいけない、と思っていたのだろう。
そして、迷惑をかけまいとぎりぎりになるまで誰にも相談しなかったのだと思う。

特別仲が良かったというわけではないが、
ある学校の行事で話すタイミングがあった。
5人ほどで最近の学校生活について他愛も無い会話をしていたのだが、ふとあいつが

"もう疲れちゃったな"

しんどさを隠すような笑顔と一緒にそうこぼしていた。
周りは、本当にそうだよなって、課題多すぎるよなって
そう言って流していたが僕は彼の言葉に少し違和感を感じていた。
でも、次の瞬間にはもういつもの彼に戻っていたので、気のせいかと考えるのをやめてしまった。

今思えば、きっとこの時にはもう彼は限界で、
この言葉は彼なりのSOSだったのかもしれない。


その次の日から彼は学校に来なくなった。


もし彼が同じ選択をとったとしても、
あの時声をかけていたら、彼の負担を少しでも取り除いてあげられるよう行動できていたら、少しは変わってたのかなと考えてしまう。今更何を思ってももう遅いが。


人間誰しも何かを抱えて生きていると僕は思う。
そんな中で僕ができることならその人に精一杯寄り添ってあげたいと思う。他の人に何を言われてもいいさ。
せめて自分の手の届く周りの人たちだけでも守れるようになりたい。


2度とこんなことにならないように。



ーやるせない気持ち

8/25/2024, 7:00:16 AM