思春期。それは悩み多き少年少女達の時代。
ピチピチ中学1年生女子の葉月もまさに思春期真っ只中。学校のこと、家族のこと、友達のこと、恋愛のこと。葉月は全てがうざったくて仕方がなかった。
そんな葉月の精神安定剤は、『SNS』
葉月はソファに寝転がり、水色のスマートフォンをタップした。ズラッとならぶ色とりどりのアプリ達。その一つ一つが、自分を歓迎してくれている気がして、なんだか心が落ち着く。
その中から可愛らしい淡色で彩られたアイコンをタップする。これは『ユニ』というアプリで、自分でアバターをコーディネートし、色んなユーザーと喋る事ができる、世界に一つだけのなりたい自分になれるSNSだ。
葉月はさっそく自分の投稿を見る。コメントといいねがたくさんついていた。心のなかでガッツポーズをし、一つ一つ丁寧に返信していく。
コメントの中には、葉月の憧れのユーザー、『AMI』もいた。嬉しさを噛み締めながら返信する。
これだからSNSはすごい楽しい。皆たくさん「大好き」、「可愛い」って言ってくれるもん。
フレンドの投稿をいいねしている最中に、『今日の空!すごい綺麗〜!』という投稿があった。投稿の写真には、雲一つ無い真っ青な空や燃えるような夕焼けが写っている。
葉月はなんとなく窓の外から空を見上げた。少し上の方が暗くなっていて、橙色、薄い青、紺色など、様々な色に染まっていた。しかしそんな景色に感動する暇もなく、空がなんだかぼやけて見える事に気がついた。
よーく目を凝らしてみるも、まだ少しピントが合わない。
「…やだ、目悪くなったかな……」
少し慌ててスマホを閉じる。それからそっと目を閉じてみた。心做しか、目がじんじんと痛む気がする。
またそっと目をあけて、空を見上げた。ぼやけているけど、澄んでいて、すぐそこにある。
しばらくスマホは部屋の端に置き、葉月はそのまま窓の外から見える景色を見つめた。
たったそれだけの話。
でも葉月は、少しだけ、外をちゃんと見ることができた気がした。
9/25/2024, 10:39:01 AM