まち田よう歌

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妹が死んで初めて迎えた朝。
ラジオが交通情報を読み上げる。渋滞や事故が頻発しているらしい。雨だ。

母はいつも通りコーヒーを沸かし
味噌汁を炊き
ウインナーを齧っている。
鼻を啜る音が鬱陶しい。肩を震わせるな。
父がドタドタと部屋から出てきてトイレに駆け込み、またドタドタ出てきて3歩ごとにえづく。
数珠は?持った。
鍵は?持った。車で行くの?
うん。え、危ないからタクシーにしようよ。
まあ、そうか。

私はバイト先に忌引きとしばらく休む旨の連絡を入れて、なんとなくコンビニに歩く。
こういう時は足の付け根に力を込めていないとふわっと空に飛んでいきそうになるので気をつけなくてはいけない。
胸に迫り上がる塊を必死で飲み込みながらいつもみたいに、ヘパリーゼとキャベジンを3円の袋と共に買った。

喪服に着替えて家を出る。
棺桶に綺麗に収まった妹が別人みたいだ。
花とか手向けられて死ぬタイプじゃないだろ。お前はそんなにメルヘンな奴ではなかっただろ。お前のせいで好きな男と夜通し酒で暴れることもできなくなりそうなんですけど。
顔の横にちょっと雑にコンビニ袋を置く。

すみません、ビンとかはダメなんです...
あ、はい、すいません、じゃああの、全然大丈夫です。

ちょっと笑って回収。
右腕の小さい重みが、未練みたいに思えて無性に腹が立った。
母も父も何も言わなかった。

3/31/2023, 7:27:22 AM