クレハ

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「一日の終わりに必ず消してね」

曲がりなりにも知名度が高い私達のLINE。
マネージャーがいうには、どこから情報漏洩するかわからないから、きちんとしなければいけないらしい。
消したところで、と思うけれど、復元してまでどうこうするのはもう警察に通報する案件だというから、自衛としてしっかりしなさい、だって。

いつも、またねってベッドに転がって打ち込んで、また明日って返事が来たら全てのトーク内容を削除していく。

なんのためらいもなかった。
そういうルールだからね。
別に重要な話はしていないし。
たぶん一週間後も、同じ会話を繰り返してるんだろう。



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「―――――ッッッ!!!!!」

いなくなった大切な友達へ。
返事できなくてごめんね。
だってさ、見たら消さなきゃいけないもん。

君のスマートフォンは解約されてしまったから、LINEのトーク欄は【メンバーがいません】。
二人で出掛けた夕方の海のアイコンだったそれは無機質な初期設定。
だけど、その日はまだお昼だったから、どうでもいいトーク内容はそのまま残ってる。
私は一人の仕事中で、またあとでって言って、君の仕事がんばってって返事は通知欄に並んで未読状態でトーク一覧に①がついている。

この未読を既読にしちゃったら、消さなきゃいけないから。
だからまだ、これは開けない。
君の生きた証を消すのは、あまりに辛すぎるから。

お題「開けないLINE」

9/2/2023, 3:08:25 AM