狼星

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テーマ:Kiss  #84

囚われていた勝瑠と合流する真たち。真はそこでミッドナイト組織のボス・化け物に出会うーー

『真兄さん! 早く逃げて!!』
後ろの方で勝瑠が叫んでいる。ごめんな、勝瑠。こんな兄ちゃんで。お前のことを今でもはっきり思い出せない。こんなの兄ちゃん失格だよな。
『真兄さん!!』
その声がだんだんと遠のいていく。シャドウのおかげだ。
「僕は僕なりのけじめを」
そう言って、第三の目を開いた。時が動き出す。
正確な時を……。


『なんでだよ、何で。シャドウ、リーリエ……』
僕は絶望した。真兄さんを置いて出てきてしまった。抱えているシャドウが口を開く。
『アイツが…真が、絶対に帰ってくると約束したからだ』
シャドウは、真兄さんがいる方向と反対側に走ったまま言った。
『真兄さんが…?』
『あぁ。そうじゃねぇと俺が許可しねぇよ』
ケケケッと笑うシャドウは、それだけ余裕があるようだ。僕は不思議でたまらなかった。あの体格、真兄さんの2倍はあった。
『心配か? 真が』
『当たり前だろ!』
『そんな弱いやつじゃねぇよ』
シャドウの声色が変わった。表情が見えたわけでもないのにシャドウは、真剣な感じがした。

『ここまで来れば大丈夫だろ』
シャドウはそう言って、僕を下ろす。
『勝瑠、よく聞け。一度しか言わねぇ。これはもう、真とは話をつけてあることだ』
シャドウはそう言って話し始めた。今後のことを……。

数時間後。真兄さんが出てきた。無傷とは言わないが、軽症ですんでいた。
「さぁ、行くか」
真兄さんがそう言うと僕の手を取る。僕は兄さんを見た。そして頷く。兄さんの第三の目が閉ざされる。僕の左手にはいつものように『閉ざされた日記』がいつの間にか失言していた。
『行ってこい。そしてまた未来で会おうぜ、真』
『勝瑠も。気をつけて』
そう言ってシャドウとリーリエが僕たちを見た。
「『行ってきます』」
僕たちはもう一度時を駆ける。


人には、たくさんの思い出がある。
辛い思い出、悲しい思い出。細かく言えば喧嘩したり、いじめられたり、勝負で負けたり……。
一方、楽しい思い出、嬉しい思い出もある。誰かと仲良くなったり、恋人になったり、Kissしたり……。
まぁ、少しマニアックなものも時にはある。とにかく、どんな思い出も時が動くことにより記録されている。それを捻じ曲げることは、本来あってはいけないこと。
しかし、これをしなければ僕たちは今後誰かに怯えて生きなければならない。それには過去を変える必要があった。
だから僕たちは、『1000年』いやその少し前の時へと戻ることにした。

♡1100ありがとうございますm(_ _)m

2/4/2023, 2:02:50 PM