狼星

Open App

テーマ:忘れたくても忘れられない #338

私が好きになったのは
よく隠し事をする子でした。
私と会うとニコッと笑顔を向けてくれる。
そんな笑顔の裏側を私は知ってしまった。

忘れたくても忘れられない。
あの日、彼が初めて私の前で泣いた日。
彼は私の前で笑顔じゃない表情を見せてくれた。
彼はもう長くはないことを私が知った日。
私の涙を見てつられるように彼も涙を流した。
いつもは大人っぽい彼も
こうして声を上げ子供のように泣くことがあるのだ。
笑顔の裏側は
周りに強がりのように見せていることだって。
私もそんな過去があった。
周りにも自分にも嘘をつき、
仮面のように笑顔を被っていたことを。

忘れたくても忘れられない。
記憶の隅にあったもの。
彼も同じなんだとわかったから。
いや、どこか彼に惹かれていたのは、
もうとっくに
彼も私と同じなんだと
無意識に認識していたのかもしれない。

彼と出会えたそのことが
忘れたくても忘れられない。

10/17/2023, 12:50:27 PM