ぺんぎん

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最愛のあの人は、泡沫の雨に混じって消えた。 
都会の街並み、隈だらけの濁った瞳がショーウィンドウに映った。
ガラス張りのそこにいる自分には、なんにもない。
なんだろう、身体の奥深くの神経をするりと撫で上げられたような、気が、
汗がべっとりとよれたシャツに張り付いて滑り落ちた。
その途端に、自分の毒々しいものが全身から一気に抜けていった。
これは、だめだ。
ぐちゃぐちゃの脳はなにもかも真っ白で。
ふっと頭をもたげるような、緩い衝撃に耐えきれない。
朽ちている、おそらく今も。ざわざわと、人混みがくちゃっと歪んだ。
だめ、この瞬間、駄目だ、そう思った。
真っ青な空が、白と混ざってぼやけていく。泣いていた。
今泣いてしまえば、もう感情が止まれないことを知っている。
嗚咽をぐっと噛み殺せば、妙な吐き気がする、息の仕方が分からない。
心は既に空っぽになっていた。何を混ぜ混んでも、詰めても、塞がってはくれない。
くだらない喪失が、今頃自分を蝕んだ。

4/20/2022, 10:39:29 AM