柳絮

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たそがれ


「こんばんは」
夕闇の中で声をかけられ、足を止めた。
「あ……こんばんは?」
知り合いだろうか。顔が陰になってよく見えない。男性。声の感じは中年か壮年くらい?
「今お帰りですか。お疲れ様です」
「どうも。……そちらもです?」
「ええ、まあ」
誰だろう。近所の人? 友達のお父さん? 職場関係?
「あまり無理はしないように。最近お参りもしてないでしょ」
確かにそうだ。
「って何で知って、」
気づくとその人はいなくなっていた。




きっと明日も


「虹の足元? ここが?」
息を切らした少年達が頷く。空を見上げてみるが、雲の切れ間から青空が見えるだけだ。梢から雨粒が滴り落ちた。
「虹の下にはお宝があるんだよ」
一番小さい少年が拳を握る。彼らは宝探しに来たらしい。
でも、そうか。宝物はないけれど、ここには確かに私にとってのお宝がある。
ようやく咲いた思い出の花を紹介すると、彼らもまた顔を輝かせた。
きっと明日もどこかで虹がかかる。誰かの幸せが空にかかるのだ。

10/4/2023, 1:25:50 PM