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カーテン

私の小学生の頃。
曖昧な記憶の中で、ひとつ。


鮮明に残っているものがある。

水色で、少し透けている。
大きなカーテン。

祖母の実家に行ったときに見たものだ。

「おばあちゃん、このカーテン、すっごく綺麗だね!それに、すっごく大きい!」

「ええ、そうね。」
「それは、私の思い出なの。」

「おもいで…?」

「ええ。」

いつだったかしら。

今はいない夫ーー
おじいちゃんと一緒に買ったものだったわ。
水色が好きだから、それにしたの。
窓につけたら、とても窓の風景に似合っていたわ。
おじいちゃんと一緒に、そのカーテンの前で喋って。ご飯を食べて。遊んで。


「いろんな思い出を、そのカーテンにはーー
カーテンは、覚えていてくれている。」

「私は、そう思ってるわ。」

そう、祖母はクスッと笑った。

その時の祖母は50歳だったが、
笑った祖母はとても綺麗だった。

「おばあちゃん。大人になったら、このカーテンもらっていい?」

「ええ、いいわよ。」

「私の、私達の思い出に。あなたのーーあなた達になるかもしれないけど。ーー思い出を、重ねていってね。」

そういってまた、祖母はニコッと笑った。

10/11/2024, 10:42:22 AM