「終点、終点です」
単調な運転手の声が聞こえる。
「皆様、次の駅でお降りください」
そのアナウンスを聞きながら、私は流れていく窓の外を眺めていた。
どれだけ進んでも、田んぼ、田んぼ、田んぼ。
車両には私と、あともうひとりしか乗っていなかった。
いつも終点まで一緒の、幼なじみのルイ。
いつの間にか距離ができて気まずくなってしまった。
また昔みたいに、なんて思ったり。
電車が駅に着く。
私たちはそれぞれホームに降りた。
「ヨウ」
夏の暑さにうんざりしていると、名前を呼ばれた。
「ルイ?」
「あのさ、ずっと言いたかったことがあるんだけど」
ルイは髪の毛を弄りながら言った。
「ヨウのこと好き」
蝉の鳴き声がやけに大きく聞こえた。
夏の暑さのせいか、頬が火照っている。
「また、返事、よろしく」
ルイはそう言い、足早に改札を出ていってしまった。
「ほんと、昔から慌ただしい」
思わず頬が緩んだ。
8/10/2023, 11:43:44 AM