ima

Open App

月のない夜にだけ、その店は現れる。
笠原町三番地古い通りを抜けて風を吸い込んだその先。
木製のアーチ型の扉を開けて中に入ると
「お帰りなさい」
カウンターに頬杖をついたその人は微笑みながら言った
「ただいま」
「今日はなんの香り?」
「温かくて薄い黄色。少しだけ甘い。」
「そっか。きっといいことがあったんだね。」
この店はいつも違う香りがする。どんな香水にも例えられない独特の香り。店主に聞いてみても特になにも焚いていないと言う。どうもここの店主は鼻が悪いらしい。

3/8/2024, 2:05:33 AM