─── 鏡 ───
父譲りの綺麗な髪
母譲りの陶器のような肌
とても美しい娘だとみんなは言う
それなのに
私は自分を見たことがない
家には鏡と名の付くものはひとつもなかった
両親に何故ないのか聞いても
買って欲しいとねだってみても
意味がないからと取り合ってくれない
だから内緒で買ってきたの
とても私好みの可愛らしい手鏡
帰宅してから覗いてみようと
その場で我慢するのが大変だったわ
両親が寝静まったあと
自室でこっそり鏡を覗き込む
数十秒見つめた次の瞬間
私は悲鳴をあげて手鏡を床に叩きつける
覗いた鏡には私の部屋しか映っていなかった
8/18/2024, 12:45:23 PM