星野 エナガ

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もう、これ以上のものは永遠に聴けない。
妹は素晴らしい演奏をするピアニストだ。いつも、ピアノに向き合っている。家族よりもピアノだった。だけど、私は別。ピアノと同等の立場。親はいつも私に妹を呼んでこいと言う。なぜなら、妹が11歳の頃。晩ごはんの時間でもリビングに来ない妹を父が連れてこようと部屋に訪れたっけ、引っ掻かれたからだ。だけど、私の場合は素直に従う。だから、親は私を頼る。妹もだ。妹は私に最初に聴かせたいといい、いつも私を自分の部屋に招き入れる。その演奏はどれも素晴らしい。
だからか、妹はテレビでは『天才的な美少女ピアニスト』と呼ばれる。本音を言うと顔は私のほうがいい。しかも、妹は顔を出していない。デタラメだ。そんなある日、妹は刺された。犯人はテレビでの適当なキャッチコピー的な物に惑わされた男だ。男は捕まったあと、「可愛くない」と叫んでいた。妹は刺された箇所が悪くて、ピアノに向き合えなくなった。いや、ピアノには向き合えるが、向き合ったら体ち負荷がかかり、死んでしまう。そうなってしまった。
今、私は妹と一緒にいる。妹はピアノを弾いていた。でも、私はそれでいいと思った。なぜなら、彼女の最期は、ピアノを弾かず、長生きするよりも、ピアノを弾いて、短命で死ぬほうが、ふさわしい。こうするしかないのだ。
最期は彼女は彼女らしく死んだほうがいい。どうせ、今日、母親に毒を飲まされたのだ。

『それでいい』

4/4/2023, 11:35:38 AM