「窓から見える景色」
私の世界は狭い。
物心ついた時から、病院から出たことがないからだ。
外の世界の写真は見せて貰えても、外を見ることが出来るのは、ベット横の窓だけだった。
私の世界は、この窓から見える景色が全て。
いつも変わらない景色。
少し動く写真みたいなもの。
こんな小さな世界のまま死んでいくのかな。
嫌だな、そんなの。
ぽた、ぽた。
布団を強く握りしめる。
でも寂しくてもいつも独りだから。
ぬいぐるみを抱きしめて布団に潜る。
周りに迷惑がかからないよう、静かに静かに泣きながら。
胸に空いた空洞は埋まらないまま。
今日もきっと誰も来ない。
「ねえ、どうしたの?」
「おーい!おーいって!もおー!」
窓をドンドンと叩く音がする。
布団から顔を出して覗くと、同い年くらいの男の子が窓の外に立っていた。
「あ、良かった、反応した!」
そう言ってはにかんで笑った顔はとても綺麗で。
いつもと同じ色褪せた世界が、いつもより少しだけ色づいて見えた気がした。
9/26/2023, 8:42:03 AM