狼星

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テーマ:窓から見える景色 #316

列車の窓から見える景色は
ほとんど焼け野原だった。
戦場から帰ってきた僕を迎えたのは
今にも息を引き取りそうな母の姿だった。
やけどを負い、
どこら中に包帯が巻かれていた。
空襲で逃げ遅れたらしい。
もう長くはないと医者から言われなくても感じた。
「ヒューヒュー」
聞こえてくるのはか細い呼吸音。
そして被害にあった他の家族のすすり泣く声。
負けた国でも勝った国でも同じ光景が見られるだろう。
戦争は国と国が意味もよくわからない喧嘩をすること。
勝っているという情報は
本当かなんて確信は持てない。
ただ戦場へ兵士を送り込まれては
その兵士のほとんどが帰らぬ人となる。
戦場だけじゃない。
女や子も無造作に逝く。
こんな戦争終わってほしかったはずなのに。
母をこんな目に合わせた
たくさんの国の人を犠牲にした国が
今頃になって憎たらしくて仕方がない。

9/25/2023, 12:22:34 PM