【セーター】
私が高校生の頃、今思えば恋愛と友達が全ての世界で生きていた
「彼氏が欲しいなぁ」が周りの中の口癖のようになっていた
月日が経つにつれて仲の良い友達達が好きな人ができ、彼氏ができ始めていく。
季節は秋頃になり
こんな私にも彼氏ができた
1つ年上の先輩で彼は卒業して専門学生
会うのは週に1回くらい
先輩達が卒業する前に男女合わせて10人前後で行った1泊旅行がきっかけで仲良くなり
付き合うことになった。
正直彼のことが好きな訳ではなかった
だけど嫌でもなかった。
クリスマスの飾りづけが店頭などで見かけるようになった頃、誰が最初に始めたのか休み時間に編み物する人が増えてきた
「セーター編んでプレゼントするんだ〜♪」
無謀過ぎる…
いきなり難易度の高いセーターに挑戦かよ
と思いつつ
私にはその手編みのセーターを着て仲良さそうに手を繋いで歩いている友達と友達の彼の姿が一瞬で想像できた
友達はとても幸せそうに見えて羨ましかった
今どき手編みのセーターなんて重い女だなと思われて引かれるだろう
だけど、その重さを受け止めてくれるという事が愛情の深さに感じたのだ
私も周りに便乗してセーターを編む事にした
一目、一目、
気を抜くと穴が空いてまたやり直し
毎日母に教わりながら少しづつ編んでいく
だけど彼との仲はどんどん悪くなっていった
だんだんとわかってきたのだ
彼の事が好きにはなれなかった事に
付き合ったら好きになっていくかもしれないと思った
でも喧嘩をするたびに(絶対別れてやる)
という自分の心の声が静まらなかった。
私には重たい手編みのセーターをプレゼントする彼はいなくなってしまった
別れた後もしばらく編み続けてみたけど難しくて編み終える事はできなかった
編み物が好きな人は別として
これは編む側も愛情が深くないとダメなんだ
友達はセーターが完成する頃には春になってしまうと悟ってマフラーに変更して無事に渡していた
結局誰もセーターは完成しないまま冬は終わってしまったのだ
別れて完成できなかった人もいれば
難しくて挫折してしまった人も。
ただでさえ自分と相性の合う人と巡り合う事もかなり難しいのにセーターを受け止めてくれる人なんて夢のまた夢に感じる
いつか私にもセーターを完成する決意ができる相手と巡り合って
その愛を受け止めてもらえるのだろうか…
それは今でも私の密かな憧れなのだ…
11/25/2022, 10:35:57 AM