お題:通り雨
その日はなんとなく気分が優れなかった。
朝のテレビの占いは最下位だっだし、メイク乗りも悪かった。
授業中も眠くてめんどくさくて、何度時計を見たかわからない。
ようやく放課後になり帰ろうとしたら、ぽつぽつと雨が降ってきた。
天気予報大はずれ。今日はとことんついてないな。
どうやって帰ろうかと考えながら下駄箱の前で突っ立っていたら、
同じクラスの男の子に声をかけられた。
どした?傘持ってないの?
サッカー部の彼は、私の子供の頃からの幼なじみ。
いつも男子とつるんでいてぶっきらぼうだが、笑顔が明るくてスポーツが似合うかっこいい彼に、私は密かに思いを寄せていた。
少し緊張しながら返事をする。
これ使いなよ、俺いいから。
彼は少し照れたように笑いながら、ずいと私に傘を差し出した。
いいのと聞くと、いいからとだけ言って、部活で使うマフラータオルを頭にかぶせながら足早に去ってしまった。
雨続きの近日、きっと傘を置きっぱなしにしていたのだろう。
そんなことできる人だったんだ。案外優しいんだな。
やっぱりかっこいいな、ずっと好きだな。
そんな思いを、心の中で彼の背中にぶつけた。
天気も私の心も単純だった。
傘をさして数分で、雨は止んでしまった。通り雨だったようだ。
鬱屈とした私の気分も、彼と話してからいつの間にか晴れていた。
私の顔にはいつの間にか笑みが浮かんでいた。
明日返す時にまた彼と話そう。
明日を楽しみにしながら、彼に借りた傘をたたんで家に帰った。
9/27/2024, 3:00:11 PM