「失われた長い時間」
とある夫婦の元に
一人の可愛い赤ちゃんが生まれました。
赤ちゃんは生まれつき耳が聞こえません。
それが原因で夫婦はすれ違い、
ついには離婚してしまいました。
赤ちゃんは最初、
他の赤ちゃんと比べて何も出来なかったので
知的障害児として扱われました。
赤ちゃんは成長し、
中学生になったある日、
知的障害ではなく難聴だと
お医者さんに言われました。
中学生はろう学校に転校しました。
だけど、知力が小学一年生レベルだったので、
ろう学校の通常クラスでは勉強出来ませんでした。
お母さんは、
「子供が勉強出来なかった長い時間を取り戻したい」
と、切に願い、子供を勉強漬けにしました。
中学生の勉強時間は一日18時間。
睡眠時間は一日2時間で、
娯楽は一切ありません。
中学生は少しでも遊んだり、約束を破ると
お母さんは酷く叱り、平手打ちを何度もしました。
お母さんは子供の為だと
教育ママになって
子供が将来、
社会に出た時に少しでも生きられるようにと
中学生に必死で勉強をさせました。
中学生は、
3時間以上寝ただけで
無理矢理起こされて平手打ちされ、
テストの点数が悪いと、
嫌いな食べ物を食べ切るまで食べさせられる
そんな人生が嫌になって
ある日、家出をしました。
中学生はどこか遠くへ行こうと
駅に向かいましたが、
駅のホームから転落して
勉強の無い世界へと行きました。
その時、初めて音という物を
耳にしました。
鳥のさえずり、海のさざなみ、風の音…
中学生は
他の人達が体験している世界を
耳で感じ取っていました。
10/21/2021, 9:09:00 AM