『バレンタイン』
甘くて苦いチョコレート
あなたのためだけに
手作りしたの
とっておきの毒入りチョコよ
可愛くラッピングして
リボンを付けて
準備は万端
あなたの好物ばかりの
ディナーも用意して
後は あなたが来るのを待つだけ
約束の時間
忘れずに来てくれたのね
玄関先で モジモジしたまま
あなたは中に入って来ない
「どうしたの?」
私が聞くと
「はっ ハッピーバレンタイン」
真っ赤な顔して
隠していた花束を
私の前に差し出した
「海外では バレンタインの日には 男の方から好きな女性にプレゼントするって聞いて 後輩に頼んで選ぶの手伝ってもらったんだ」
それじゃあ…あの時一緒にいた女性って…
「ありがとう とっても嬉しい 早く入って 料理が冷めちゃう」
私は できるだけ明るく言った
二人で料理を食べた後
「もうひとつ渡したいものがあるんだ」
彼はそう言って取り出したのは…
「僕と結婚してくれませんか?」
いつだったか
私が欲しいと言っていた
ティファニーの指輪
覚えていてくれたんだ…
「もちろん 喜んで」
私は笑顔で指輪を受け取った
「実は 私も渡したいものがあるの ちょっと待ってて」
そう言ってキッチンに向かう
私が手に取って あなたに渡したのは…
甘い甘いガトーショコラ
毒入りチョコは…
切り札として隠して置くわ
だから
油断しないように
くれぐれもご用心
2/14/2023, 11:14:28 AM