あてこ9

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小さい頃から、ススキが好きになれなかった。

学校からの帰り道、空き地や道端に背の高いススキがあると、視界が遮られる。

そこから何かが覗いている気もするし、それこそ、幽霊の正体みたり枯れ尾花。

冷たい風が吹く頃には、夕方の暗い道に、ふわふわしたものが動くのだから、たまったもんじゃない。

庭の草刈りの手伝いの時も、ススキの葉は、気を抜いた拍子に、ほら、スッと、切りつけられて。
薄い細い線の傷の癖に、いつまでも痛いあの傷。

それにもめげず、戦うんだけど、
根っこはしっかりしすぎて、株ごととるのは諦めて、上っ面を刈るだけ。

春からはまた、ぐんぐん伸びだす。それも、もっとたくましい株になって。

いやだいやだ。そう思ってた。

大人になって、都会に住むようになると、空き地もないし、庭先にある家もあるかもしれないが、ススキに視界を遮られる前に、塀がある。

と思ったら、お月見に飾る用にと、なんと花屋で売っているではないか。

買うものだったのか。
私には、わけがわからない。が、

そういえば、電車から見る川の両岸が、いつの間にか、ススキより、せいたかあわだちそうの黄色が目につくようになった。

気軽に摘む場所もないんだな、

確かに、外来種強し。
一時は、花粉症のもと、他の植物が育たない物質を出しながら、覆いつくしていく、と悪者扱いも、

よく調べてみたら、
ぶたくさと間違えられてるだけで、花粉も重く、なんなら、薬草にもなる。ということなら、それも仕方ないこと。

背の高い、黄色の群生が、あの寂しげなススキにとってかわる。
日本の風情も、変わっていく。

と、思いきや。

せいたかあわだちそうは、他の植物が育たない物質を出しながら制覇していくんだけど。

多くなりすぎると、今度は、自分がそれでヤられて、勝手に減っていくんだって。
なんだか、いじらしくなる。

だから、

最後の最後に残るのは、ススキ。
と読んで、ぎょっとした。

何かが潜んでいる気がした、あの時のように。


ススキの花言葉を、調べてみる。
「活気、勢い、元気」
ああ、やっぱり。
ススキは、見た目とは違う。

私は、今でも、ススキがこわいのだ。

#ススキ 2022.11.11

11/11/2022, 10:59:14 AM