「私が亡くなったら、どうかこんな村捨てて遠くの街に逃げてくださいね」
そう言った最愛の妻は、先日亡くなった。
病死でも事故死でもない、村で古くから伝わる伝承に沿って生贄として崖から落とされたのだ。俺は、その事がどうしても、どうしても憎らしかった、殺したくなった。
だから、
手にまだ生暖かい液体が伝う。無意識じゃなかった、意識的に俺は人を殺した。失敗しないよう、慎重に計画を立てて殺した。こんな事をして意味なんて無いことは承知の上だった。罪悪感とか後悔とかの感情は全くない、それどころか今までにないほど清々しい気分だ
程なくして俺は謎の喪失感に襲われた
蹲った1人の部屋でポツリと呟く
「もう、どうしようもなく遠くに行ってしまったね…俺も君も」
血とは違う熱い液体が俺の頬を伝った。
【遠くの街】
2/28/2024, 10:57:12 AM