ここは不思議な喫茶店。ここに来るのは明日を望まない人だけ。決して広くはない店内にあるのはふかふかのソファが二つと小さなテーブル、一応カウンターもあるがマスターの姿はない。もう終わりだよ。とあるサラリーマンはそう呟いて俯いた。ふと視線を上げるとそこには煌々と湯気をあげるコーヒー。得体の知れない喫茶店。得体の知れないコーヒー。いっそのこと毒でも入っていればいいのにとカップの中身を喉に流し込む。暖かくて苦くて柔らかいそれが身体中に広がってヒカリに包まれた。
目が覚めるとそこは朝だった。時計も何もないので詳しいことは分からないが間違いなくそこは朝だった。周りには何もない。本当に何もないのだ。きっと全部終わったんだ。そうに違いない。腹の中の温かさを感じて喉の奥がひゅっとなった。目を閉じて息を吐いてこの場所と一体になる。誰かが笑うのが見えた。
5/6/2024, 4:30:55 PM