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恐らく、これは必然だったのだろう。

永遠に叶うことの無い夢は月の明かりへと消え、遍く星は宇宙の彼方へと旅する。
退屈だった幾多の日々が、実は幸せだったなんて

そんなの、後出しだと思う。

いや、分かっていたのだろう。
この日々がどんなに幸せだったか。
貴女のお陰でどれだけの幸せで満たされたか。

まあ、後悔したところで何も変わらないが。

今日も僕は月に願う。

誰も居ない、この大地で。


もう何日経ったのだろうか。
あの時、僕と、地球最後の女神は、いつもの夕飯が最後の晩餐だと言うのにも気付かず、談笑をしていた。
雲一つない夜空を眺めながら。

「月が綺麗ね。」

そう微笑み言う貴女は、まるで今日が最後の晩餐かってことが分かっていたのかもしれないくらいに、どこか悲しい表情をしていた。

「どうしたの、元気ないけど。」

「私、晴日さんと居れて幸せだったよ。でも、もうちょっと、話したかったなぁ。」

「何言ってんの?まぁ、最近仕事も忙しくなってきて話せてないけど。」

「いいの、いいの。もう、終わるから。だけど、せめて最後は名前で—————」



“みつき”

美しい月、と書いてそう読む。

美月。ごめんね。名前、呼んであげられなくて。
多分僕。自分が上だって思ってたんだ。


僕は願う、



君とまた、笑い合える日々を願って。








「晴日さん。」


「———美月!」




誰も居ない真っ白な空間で、君と二人、月に願う。
次こそは、ちゃんと愛してみせるから。
ちゃんと、名前で呼ぶから。




あれからどれほど月日が流れて行ったのか。
僕は一羽の鳥になった。
今日は満月。あの日を思い出す。
そして、貴女のこと。
美月のことを。

今も君を探している。
いつも、いつだって。
僕の心とは裏腹に、明るく、美しく輝く月は———





「美月?」


5/27/2023, 5:35:32 AM