4「夜の海」
俺には習慣がある。夜の海で人魚の女の子と会うことだ。
出会いは窓から見える影を見に行き、人魚の女の子がザバッ、と海から上がって来た時だった。
人魚がいることには疑問を抱かなかった。この村には第第伝えられている物語があるから。
人魚と式を上げたものは幸せになる。そんな言い伝えだ。
どうしてもあの子が欲しい。そう思ってからは早かった。
あの子は、人は怖いと思い込みがあったらしく、俺が優しく接してあげることでギャップ萌えらしき状態になっていた。
好きだと詰め寄り、親密な関係になった。そしてプロポーズのときが来た。
「君と一緒になりたいんだ。君が良ければ、式をあげさせてください。」
彼女は驚いたようだが、照れながら、喜んで、と返してくれた。
式の日になった。彼女が水槽で運び込まれる。
そこには、村の一族と人数分の空の食器があった。
彼女は結婚式を思い描いていただろう。だが、ちがう。
今日行われるのは、「人魚の解体ショー」だ。
彼女が声にならない悲鳴を上げながら連れ去られる。
皆の注目が彼女に集まる。
ダン!
この村に伝わる昔話は、人魚を解体して食べる、「式」を上げると寿命が伸び、「幸せになる」というものだ。
今日という日を、村のものは楽しみに待っていた。顔が嬉しさで歪む。
男が、恋人だったはずの人魚の肉を口に運ぶ。
「やっぱ、苦労したかいあって美味いなあ、、、やっと君と一緒になれるよ」
8/15/2023, 10:08:42 AM