悪い梨

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醜い姿は見せたくない。

例えどんな時でも。



死ぬ間際がこんなにも怖いものだなんて知らなかったの。
化粧をして、綺麗な服を着て、みんなに「可愛い」「綺麗」と言われて、満足してたの。
誰かに振り向いて貰えなくたって、その賞賛を得るためにたくさん働いて、お金を貯めたの。
それが、たった十数年。
もう「綺麗」で居られなくなった。
顔にしわができて、化粧でごまかせなくなってきた。

醜い。

だから私は消えたかったのに、私の「怖いもの」を知ったあなたは私を消させてくれなかった。

結局、何年隣に居たのかしら。
気付けば、私よりあなたが先に消えてしまった。
でも、私は1人でも怖くなかったの。
消えてしまったあなたが、私の中にある「私」を見てくれたから。
どんなに老いても堂々とできたの。





あら、あなた。久しぶりね
元気だったかしら。
どうしたの、そんなに泣いて。
そんなに会えて嬉しいの?

奇遇ね。
私もよ。
なんだか若返った気分。

そうだ、あなたに会えたらね、もう一度ちゃんと言いたかったことがあるの。
知りたい?
ふふっ、いいわ





愛してるわ、あなた
こっちでも、私の隣にいてくださいね

6/27/2021, 6:03:15 PM