特別な存在____
ストップ!私のお話を聞いてくれませんか、?
今回は本が死ぬほど嫌いだった私を
変えてくれた先生のお話をしたいと思います。
昼の自分を一生懸命演じて、
夜になると普通じゃない自分に戻る。
そうやって生きていた。
昼間普通でいるためには夜泣く時間が必要で、
それは段々と不眠症へ変わっていった。毎日毎日、昼普通にできているか不安で苦しい日々を送っていたとき、学校から図書カードが配られた。
私は、中学生になった今でも絵本しか読んだことがなく、本が大の大嫌いだった。だから、その図書カードも雑誌かな何かに使おうとしていた。
人生で2回目の本屋。紙の匂いに包まれながら雑誌コーナーへ向かう。だが、視界に青く恐ろしいものが映り込んだ。
「よるのばけもの」
それは、学生の男女が夜の学校で向き合っているただの少しきれいなイラスト。でも、何よりも目に止まったのが、月の光で机にできている影だった。
男子は、恐ろしい化け物に。女子は、にんまりと気持ちの悪い笑顔を浮かべていた。
私は、ゆっくりとその本を手に取りレジへ持っていった。なぜ買ったかはわからない。ただ、今の私にはこの本が必要な気がした。
初めて小説を読んだときの感動は今でも忘れられない。私は、部屋で涙を流しながら何度も何度も本を読み返した。感動するお話ではない。でも、涙は止まらなかった。苦しい日々が続いていた私はこの本にとても救われたのだ。
図書カードをくれた人は宮下先生といい、約350人以上の全校生徒に、1000円分の図書カードと何百万という本の寄付までしていた。
お礼を言おう。次の日、私は担任の先生に宮下先生へお礼を言いたいと伝えた。
「宮下先生は亡くなったんです」
そう、言われた。その後じっくりと宮下先生について教えてもらうことができた。
先生は、私が入学すると同時に入院したらしい。国語を担当する宮下先生は、本が大好きで、入院中もずっと本を読んでいたとか。そして、最期に考えた自分にできること。それが、すべての貯金を使い果たし、この中学校に本の寄付することだった。
数日経ってそれは、新聞やテレビで放送された。私は、大好きだったテレビを見つめ、宮下先生の授業をしていた写真や先輩たちのインタビュー、先生のお母さんの話を聞いた。
そして、一番最後には真っ白な画面に
小さな文字が表示された。
「1人でも多くの人が、
本を好きになってくれれば私は満足です」
これが先生の最期の言葉。
伝えたかった。
小説を好きになるきっかけをくれて、
本当にありがとうございましたと。
伝えたかったな。
ここまで読んでくださった方本当にありがとうございます。本の素晴らしさを教えてくれた宮下先生は私にとって特別な存在です。
小説を好きになってからたくさんの本を読んできましたが、私の中で今のところ、住野よるさんの「よるのばけもの」を超える作品はありません。
ぜひ読んでみてください。
3/23/2023, 7:54:46 PM