狼星

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テーマ:終わらせないで #16

ライブ会場全体に響き渡る歓声。
やまない拍手。アンコールの声。黄色い歓声。
私を求めている人がいる。
私のことを待っていてくれた人がいる。
私のことを応援してくれている人がいる。

私はベットにいた。
あぁ、これで何度目だろう。こんな夢を見続けるのは。
私は起きてスマートフォンを起動させる。
見たのは自分の動画のコメント欄だった。
『SaNaの曲、ライブで生で聞いてみたいな〜』
そんなコメントにいくつものGOODマークが押されていた。
私だって、ライブがしたい。みんなに聞いてもらいたいよ。自分の曲を。
私はSaNa。歌い手+作曲家という仕事をしている。
音楽が好きなのは小さい頃から。人前で歌うことを苦手としていたため、最初は歌い手として顔出しもせずに歌を歌ってインターネット上に上げていた。
私のことを応援してくれているリスナーの人のお蔭で、そこそこ有名になり、もうすぐライブも控えていた。
しかし、世界に広がるウイルスの影響でそのライブは中止になった。延期でもなく、延長でもなく、中止。
厳しい現実は夢のように早く覚めてはくれなかった。
自由も制限され、ライブができなくなるアーティストさんが何人もいた。
私の夢でもあったライブ。私はライブで初めて自分の姿をあかすのだとドキドキしていた。怖いという反面、どれくらいの人が私を応援してくれているのかを知るいい機会だった。
そんなライブの中止は、私の心を抉った。

夢で終わらせないで。現実でも実現したい。
心の中の私はそう叫んでいる。
声を出さないライブという選択もあった。
でも、絶対声を出したライブのほうがみんなと一体となれる。私はそう思った。
だから、今は私が一方的ではあるけど音楽をみんなに届けるんだ。
歌い手+作曲家の私が。SaNaが。
いつか、リスナーさんが喜んでくれるような。
ライブを待っていてくれた人たちのために。
私のことを応援してくれている、まだ見ぬリスナーさんのために。

私は今日も音楽を生み出す。

11/28/2022, 1:42:45 PM