エリンギ

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【嗚呼】

「うわ、めっちゃカラスいるやん」
「それな、誰か呼んだ?」
放課後、教室の掃除を2人でしていると、窓の外にカラスが何羽もいることに気づいた。
「あれ…向こうの屋上誰かいるくね?」
友が指差す先を見ると、確かに管理棟の屋上に人が見える。俺たちのいるのは南校舎4階だが、あちらは3階建てなのでよく見えるのだ。
「…え、黒羽先生じゃね?」
真っ黒なスーツ姿には見覚えがある。というか毎日見ている。我らが2年2組担任の、黒羽葛先生である。黒羽、という名字からは10人中10人がカラスを想像するだろうし、なんなら名前は「かずら」だ。実にカラスっぽい。
「先生屋上でカラス呼んでんの?」
その状況にしばらく2人でツボる。腹を抱えながらふと思い出す。
「そういえばさ、この前調べたんだけど」
「おん」
「嗚呼ってあるじゃん、あの漢字。あれって、カラスの鳴き声が由来らしいよ」
それに友が爆笑する。つられて俺も笑ってしまう。
なぜって、黒羽先生の口癖だからだ。
「嗚呼カラスさん、おやつをあげましょう」
そんなことを言っている先生が容易に想像できて、その日の掃除は少し長引いてしまった。

fin

漢字って面白いですね〜

3/9/2025, 12:00:43 PM