【あなたへの贈り物】
ピロン、と通知音が鳴る。
見ると、「今日の予定」と題されたタスクが表示されていた。忘れたいのに設定されているのは、多分僕の未練だと思う。
『誕生日おめでとう』
そこまで打って、全部消した。メッセージアプリを閉じる。もう終わった関係なのだ。今さらおめでとうも何もない。
なんて、冷めた考えが出来たらどんなに良かったか。
机の上には、2ヶ月前から準備していたプレゼントが置かれている。綺麗にラッピングされたそれはマフラーで、白い肌が引き立つよう紺色を選んだ。
僕はそれを、どうすることも出来なかった。
君がくれた誕生日プレゼントも、あげたプレゼントも、全て覚えている。もらったものは今でも大切にしているし、君だって大切にしてくれていたはずだ。
「馬鹿だなあ」
呟いても、そんなことないよと慰めてくれる優しい声は返ってこない。その事に今さら寂しさを覚え、頬が濡れた。
「ごめんね。…徒情けだったみたい」
忘れて、と言った君は美しくて、儚げだった。徒情けなんて言葉を知っている博識な君が、僕は大好きだった。
「ふざけんなよ、僕は…僕にとっては恋衣なのに」
あの時言えなかった本心が、一人きりの部屋に響く。
この気持ちもあなたへの贈り物だと言えば、君は笑ってくれるだろうか。
fin
徒情け…その時限りの気まぐれな恋
恋衣…心から離れない恋
※知りたいこと図鑑/みっけ 参考
1/22/2025, 10:57:27 AM