狼星

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テーマ:太陽の下で #13

双子の子供がいた。
名前は健太と陽向。
健太も陽向も活発な子だ。
私は彼らを産んだ母。彼らの父親ははやくに亡くなってしまい、私が女手一つで育てている。
再婚する選択もあった。でもそれは、彼らにとって複雑な思いをさせてしまうと思った。

健太と陽向も高校生になった。
二人とも一緒の高校に入った。
健太はサッカー部。陽向は吹奏楽部で、トランペットを吹いている。
私は女手一つだからといって二人を縛るのではなく、自由にやりたいことをさせることにした。
もちろん、やりたいこともやらせるかわりにやりたくないことだってやらせる。
私一人では家事を全て受け負うことはできない。だから、陽向は洗濯、食器洗い。健太は風呂掃除、畑の水やりをやってもらっている。私はそれ以外の仕事をする。
部活で忙しい時、私が仕事で忙しい時はみんなで助け合う。そういう家族だった。

「お母さん」
書類を打ちながらウトウトしているとき、陽向に呼ばれる。
「ん…? なに?」
私が顔をあげると陽向と健太がそこには立っていた。
今日何かあったっけ? そう考えていると陽向が背後に隠していた何かを私に渡す。
「これ…。どうしたの?」
渡されたのは暖色系の花束だった。
「今日は‘’双子の日‘’なんだって」
陽向は、そう言うと今まで黙っていた健太の脇腹を突く。やめろっ! そう言いながらも私を見て、
「俺たちを育ててくれてありがとう」
恥ずかしくなったのか顔を背ける健太の耳は赤く染まっていた。
「いつも仕事頑張って、私達に好きなことさせてくれてありがとう」
陽向もそう言って私に微笑む。
その時思ったんだ。あぁ、頑張ってきてよかったって。そう思うと涙が出てきた。そして思い出した。
「ねぇ、今日は部活休みでしょう? 私も仕事が休みなの。少し話さない?」
二人は頷いた。
私達はソファーに腰掛けると
「さっきね、あなた達を産んだときのこと思い出したの」
「私達を産んだときのこと?」
陽向に頷くと、私は話し始めた。

健太と陽向が産まれた日は、天気が悪かった。
予報では晴れだった。でも、予報は予報なんだなって思った覚えがある。
でも彼は…。彼らの父であり、今は亡き私の夫は
「天気は悪くても、今日は君のハレの日だから」
そう言ってくれたのを覚えている。
そして私は二人を産んだ。
その後すぐ、天気は変わった。
太陽の光が雲の隙間から差し込み、私の病室に影を作る。
夫は言った。
「言っただろう? 今日は君のハレの日だって」
自慢気に言う夫。天気までは、変えられないでしょう? その時は言ったけど、私は生まれた双子の子を見て
「まぁ、そうかもね」
そう呟いた。双子は起きて泣き始める。一方が泣くともう一方も泣き始める。
夫はそれを見てオロオロしていて、それを見ておかしくなって笑う私。それを照らす太陽。
私はそこで、私達は太陽の下で生きているんだなと改めて実感した。
そして、彼らの名前を決めた。
太陽の‘’太‘’を取って健太と、太陽の‘’陽‘’を取り陽向。
私はこの日のことを忘れたくないという思いから彼らにそう名付けようそう言うと、夫も頷いてくれた。

こんなにも大きくなった二人を夫も見ることができたら、どんなに嬉しがっただろう。
気がつくと部屋の窓から太陽の光が差し込んでいる。まるであの日のように。夫が近くにいてくれている気がした。
私は心の中で
『ねぇ、あなた。こんなにもいい子に育ってくれた』
そう話しかける。もちろん返ってくるはずはない。
でも、見ていてくれているよね? 
空の上から、太陽の下にいる私達を。

11/25/2022, 1:52:30 PM