愛を叫ぶ。
「愛してるって言えよばかー!」
河川敷で思い切り叫んでいるのは最近恋人ができた僕です。もちろん迷惑にならないように叫んでるのでご安心を。そもそもなんで叫んでたか気になりますよね。え?気にならない?いやいや、聞いてくださいよ。結構悲しいんですよ?言葉で伝えてもらえないとさ。
その人が奥手というかはずかしがりやなのは分かってるんです。緊張したり不安になったりしないようにゆっくり時間をかけてでもいいよって言いました。その人のこと好きですし、愛してますし、一生一緒でもいいくらいなんです。だから、その人に負担をかけたくなくて、嫌われたくなくて慎重にお付き合いをしてたんです。でもね、ずっと話すだけっていうのもさ、ちょっと物足りないというか。別に今すぐ口づけしましょうとかじゃなくて、でも恋人同士のいちゃいちゃ的な?のしたいんですよ。それがなくても愛してるくらいなら言ってほしいなって。
それをその人に言ったらまだ早いとか言うんです。おかしいと思いません?顔真っ赤にしてるのは可愛いですけどそれで誤魔化そうったってそうはいかないですよ。まぁ、毎回絆されちゃいますけど。愛してるって言うだけで良いんだけどなぁ…
最悪です。浮気ですよ。仲良さそうに肩組んじゃって。なんでそんな嬉しそうに笑ってるんですか泣きますよ?あなたの前で大号泣かましますよ?嗚咽もれるくらい泣いてやりますけどいいんですか?なんて、言いませんけど。恋人を縛る気はありません。束縛激しいって思われたくないですし、なにより……同性なんだから、普通に恋愛なんて、できるわけ、なかったんですよ。あはは、ごめんなさい、気持ち悪いですよね。彼もそう思ってたのかな。彼も、僕を、嘲笑いたかった、だけ、なのかな。
今、河川敷にいます。あ、風に当たりたかっただけです。死にたいとかは全く無いですよ。ご安心を。
でも失恋とか初めてですよ。もう恋愛なんてしない。先ほどLIMEを送りました。アプリで別れ話ってフィクションかと思ってましたけど意外とするんですね。
さて、帰りますか。
「あ」
彼がこちらを見てますね。いや睨んでる?めちゃくちゃ肩で呼吸してますね。汗だくですけど大丈夫かな。
「………てる」
なにか言ってますかね?何でしょう?
「おれはぁ…俺はー!お前を、あ、あいっ、愛してるー!」
え?
その時の彼の顔は林檎のように赤くて。夕日に照らされている彼はいつもよりキラキラしていました。
「好きになったのお前が初めてで、恋人って意識すると恥ずかしくて顔真っ赤になるから、その、カッコわりぃとこ、見せたくなくて。でも、浮気はしてねぇ。これは絶対誓う。ただの友達とは肩組んだりできんだけど、マジでそれ以上の関係は持ってないし持つ気ねぇから。でも浮気って不安にさせたよな。本当にごめん。」
「こちらこそ、その、浮気だと決めつけてしまってすみませんでした。あなたのような誠実な方が浮気なんて、…ちょっとしそうだなとか思ってました」
「そこは嘘でもしないってことにしてくれ。改めて、言わせてくれ。あ、愛してる」
「あはは、遅すぎですよ、ばか…!」
5/11/2023, 1:39:50 PM