空を独り占めできるから、平日昼間のサウナが好きだ。
大浴場に入ったらまずは全身を綺麗に洗う。
公共の場での衛生的な理由が大部分だろうけど、
私はこの「身を清めるような感覚」が好きだ。
それに体がまっさらな方が、
サウナで汗をかいている実感もひとしおな気がする。
メインイベントのサウナに入る前に、
水風呂の水を手桶で掬って全身にかける。
シャワーで温まった身体を冷たい水でしめてから、
サウナの重い扉を開ける。
サウナに入ること自体は正直気持ち良くはない。
蒸し暑い空間にずっと居られるほど鈍感でもない。
室内テレビで流れている、さして興味もない
お昼のワイドショーを見ながら一人じっと座る。
5分もすれば、「もうそろそろ」と「あと少し」が
頭の中で戦いだす。
サウナから出れば水風呂・スポーツドリンク・外気浴
の天国が待っている。
もちろん汗をかけばかくほど気持ちが良くなる。
「もうそろそろ、いや、あと少し…………
CMになったら外に出よう」なんて。
外に出たらまずはスポーツドリンクを飲む。
サウナで乾いた身体に染み込んでいく。
指の先までドリンクが染み渡るような
不思議な感覚になる。
次は水風呂。
恐る恐る身体に水をかけて、
少しずつ冷水に慣らしていく。
いつもより全身が敏感になっているような気がする。
全身を水風呂につけた頃には、なぜか身体の内側が
じんわりと、温かいともなんとも言えないような
感じになる。
あれだけ恐々と水に浸かったのに、
少し慣れれば身体をもぞもぞと動かして
さらなる冷たさを求めている。
とはいえ浸かりすぎも毒な気がするので、
1分半ほどでさっと出る。
最後は外気浴。浴場の外に設置された
「ととのいスペース」へ向かう。
外気浴用のスペースと言っても、露天風呂の横に
背もたれと肘置きがついた椅子が置いてあるだけだ。
それにどかっと座り、もう一度スポーツドリンクを
飲んで、周りに誰もいないのをいいことに
作ったような所作でゆっくり天を仰ぐ。
高い壁に切り取られた空は、私だけのもの。
空までをも独り占めした気分になる。
普段は何とも思わない雲の流れを、ただ眺めるだけ。
あるときはゆっくり、あるときは早く流れるそれを
見て、
「いま、ここに生きていること」
をはっきりと自覚させているのだ。
7/16/2024, 12:21:41 PM