あかりをつけましょ ぼんぼりに
お花をあげましょ 桃の花、、
「あなたがもしおひなさまみたいな着物着たら、きっと可愛くて素敵なんでしょうね」
何時だかのひなまつりの日、親戚の人のそんな言葉に素直に頷くことが出来なかった。
それが僕にとって、自分が周りの人と少し違うという事に多少なりとも気づき始めるきっかけとなった。
僕はトランスジェンダー、まぁ性同一性障害ってやつ。
身体は女だが心は男。
なんとも面倒臭い感じに生まれてしまったなぁ。
この事はまだ誰にも言えていない。
自分の周りにはあまり、というか全くいないしね。
僕が着るとしたらお内裏様の服がいい。
落ち着いた色でありつつもカッコよさを持ち合わせ、左腰に差した刀。
想像するだけでわくわくしてしまう。
自分の子供がひなまつりにこんなこと考えてるなんて思いもしないんだろうな、この両親。
ふと、飾られた全体をぼんやりと見るとおひなさまと目が合った気がした。
もちろんそんなはず無いので僕の思い込みなのだろうが。
ただ僕は彼女から目が離せなくなっていた。
おひなさま、僕は僕を取り繕って生きていかなきゃいけないのかな。
それとも公表するかは別として自分らしく生きるべき?
、、答えてくれる訳がないが、僕にはひとつ思ったことがある。
それは、ひなまつりがあったから僕は自分の生き方についてちゃんと考えることが出来ている、という事だ。
ひなまつりがなくてもいつかは気付いて向き合う日がきていただろうが、早くに自覚すれば自分の生きたいように生きられる時間も伸びるのではないか。
だとするならば、
ひなまつり、ありがとうございます。
僕はこれから自分の生き方についてよく考え、自分の生きたいように生きていけるよう頑張ります。
ひなまつり正直面倒臭いと思う時もあったが、その行事にどんな発見を楽しみを見つけるかは人それぞれだろう。
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『ひなまつり』
3/3/2024, 2:51:18 PM