イオリ

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過ぎた日を想う

実家に帰ると、垂れ下がった柿の枝が増えていた。実が大きくなった証拠だ。色もオレンジに染まりつつある。もうそろそろ収穫。渋柿の木。

昔は隣にもう一本あった。こちらは甘柿。渋柿は採ってから皮を剥いて軒先に吊るす。甘柿は皮を剥いたらすぐ食べられる。子供の頃は甘柿の方が好きだった。すぐ食べられるから。

それが、10何年か前の台風18号か19号か20号かで倒れてしまった。家族一同、楽しみが干し柿のみになってしまったわけだ。


また別のある日の実家帰り。

車を降りて家に向かう途中、猫の鳴き声が聞こえた。周りを見渡すと、柿の木の枝に登って私を見下ろしている。

ただいま。

にゃあ。(おかえり)

家、入んないのか?

にゃ。(まだいい)

じゃあ先に入るよ。


着替えてから、コーヒーを飲むのに電気ポットのスイッチを押した。

湯が沸くのを待つ間、窓から柿の木を見てみた。

枝の上で鎮座するシャム猫。こちらには背中を向けている。顔は向こう側。甘柿の木があったほう。

昔は二本の木をいったり来たり、登り降りしていた。若猫の頃だ。いまは一本の木だけ。

背中になんとなく哀愁を感じる。

甘柿の木のこと、思い出してるのかな?でもないものはしょうがないよ。

コーヒーを淹れた。棚からクッキーを出して食べた。

まだ戻んないのかな。戻ってきたら、ちゅ~るをあげよう。寂しさも、ちょっとはまぎれるはず。









10/6/2024, 11:16:37 PM