突然の別れ
夜中、不意に電話が鳴った。
こんな時間に誰かと画面を見てみれば、実家の母だ。
その瞬間、ああもしかして、と脳裏に父の顔が浮かんだ。
「もしもし」
「あのね、お父さんが……」
慌てた様子の母の声は、父の危篤を知らせるものだった。
嫌な予感は当たるものだ。
いつか先輩が言っていたことを思い出す。
『離れて暮らす相手にさ、一ヶ月に一日会うとするでしょ。そうすると一年で十二日。もし相手の寿命があと十年としたら、たった四ヶ月くらいしか一緒に過ごせないんだよね』
急いで家を出たが、病院に着く前に、父は旅立ってしまっていた。
ありがとうも、さようならも言うことができなかった。
別れは突然やってくる。
世間ではよく言われることだけど、実際はちっともわかっていなかった。
5/19/2023, 12:41:57 PM