【声が聞こえる】
秋。肌寒いなんて思うのも消え去った残暑が延々と続く四季の中で儚い存在となりつつある季節。この時期を迎えると空しさが心を支配する。普段から空虚なのに。また、彼女の元へと向かう。墓前に線香を供えて手を合わせる。線香の香りで現実を叩き付けられて気が狂いそうになるが生きている俺に出来るのはこれだけ。いつでもいつまでも思う。先輩は何を望んでいるのだろう。復讐じゃない事は知っている。興味すらないのが本心だろう。あの人はそういう人だ。でも、俺は一族の為にやりとげたいんだ。
「好きにしてもらって構わないよ。私の役目は終わったからね。亡者は亡者らしく安らかに眠るよ」
そんな都合のいい声が聞こえてきた気がした。先輩…。墓に手を伸ばしても何も掴む事はない。
9/22/2024, 11:51:52 AM