別れ際に
「今度はうまくいくと思ったんだけど」
「毎度おなじみ、ってやつね」
突如降ってきた雨の中、ハンドルを握る幼なじみの彼女。
機嫌の悪い私は助手席のシートを倒して目を瞑ったままだ。
「なにそれ、ひどいな」
「フフッ。ところで、なんでフラれたのよ」
「会う約束してた日に、やっぱごめん、他に気になる子がいるから会えないってさ」
「本命がいたんだ。で?どこで知り合ったの?」
「ネット」
「で?いつから付き合ってたの?カッコいい?」
「1カ月くらい前かな、顔はわからない、会ったことないもん。でもこの人がヒーローって思ったの、、、って笑いすぎ!!」
「ヒーローて、、。じゃあ会ったことないヒーローに会う前にフラれたんだ?よかったよ、あんたの顔見てから別れ際に、やっぱごめんって言われるよりはさ」
「どういう意味よ!あーぁ、彼はダークヒーローだったのか、、、って笑い過ぎだっつーの」
「ダークヒーローにはキャットウーマンが付き物ってね」
「何うまいこと言ってんの、笑えないから」
「ま、傷心のあんたを励ますために、こうやってドライブしてんだから。綺麗な夜景でも見せてあげるよ。いや、いい友達だわ私」
「ハイハイ、ありがとね」
通り雨らしく、雨はすぐに止んだ。車が止まる。
「この辺かな。さぁ、ご覧あれ」
機嫌は直ってないが、夜景は見たい。倒してたシートを起こした。
「う、わぁ‼️、、、真っ暗だな」
「真っ暗だね」
「夜景はよ?ここどこよ?」
「どっかの山ん中だね」
「迷ったか」
「それっぽい」
「最悪だ‼️」
「最悪だ‼️」
思いきり笑ったおかげで失恋の痛みはどこかへ飛んでしまった。
私のヒーロー探しはまだまだ続く。
end
9/28/2024, 11:25:26 AM