海月

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#56【誇らしさ】


人生で唯一、誇らしさでいっぱいになったのは
とある歌のオーディションに受かって
プロのアーティストと一緒に
ホールでデュエット出来たことだ。

音源を送って、一次審査に通ったときは
合格を伝えられた電話口で半泣きだったし
審査員の前で歌った二次審査は
緊張しすぎて声が震えた。
あぁ…これは落ちたわ…と
実力の半分も出せなかった自分に
がっかりして、泣きながら帰った。
合格の電話が来たときは信じられなかったし
メールとライブチケットが届くまで
半信半疑だった。

各ライブ会場に選ばれた人がいるから
私だけが特別なわけではないけれど
数多く受けてきたオーディションの中で
初めて合格した嬉しさは計り知れなくて
プロにはなれなかったけれど
歌うことをやめなくてよかったと心から思ったし
あの景色は一生忘れないなと思った。

一緒に歌ってくださったアーティストさんは
とても気さくで、いい匂いがした。
トレードマークの足元は、その日も煌びやかで
私は心の中で「あぁ!本物だ!」と叫んだ。

たくさんハグしてくれたこと。
歌を褒めてくれたこと。
これからの自信と目標になった。

今でもテレビで見かける度に
背筋がしゃんとする。

今日も彼女の足元には
ルブタンのヒールが輝いている。


8/16/2023, 11:56:30 AM