ユメピリカ

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 中学時代、10万円を募金した友人がいた。中学生にとって10万円を貯めるのは大変だろうに。
 理由は特に聞きもしなかったが、私はよほど不思議そうな顔をしていたんだろう。眉を下げ笑いながら、友人は勝手に喋りだした。

「親に取られるより誰かのためになるほうが良い」
「ずいぶん後ろ向きな募金理由だな」

 そんな理由なら自分のために使えよと思ったのを覚えている。私は演劇部なのに表情を作るのは苦手だったので、そりゃあもう呆れた顔をしていたと思う。

「まあ、いいや、ゲーセンいこう」

 詳しく聞く方が友人のためなのかもしれなかったけれど、私はいつものように流すことにした。人と深く関わりたくなかったのだ。
 それでも、その距離感が好ましかったのか。私の人生において恋愛感情を向けてくれたのも好きだと告白してくれたのも、友人だけだった。

          【誰かのためになるならば】

7/26/2024, 12:47:19 PM