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みんなが本音で言い合える世の中について思いを馳せる。喧嘩が絶えず、気に入らない相手と殴りあいとかしたりして。でもそいつとお酒を飲んで朝まで語り明かしたら次の日には冗談を言い合って大口開けて笑いあえる。
そんな世界。

時々、昭和の時代に創られた時代劇をみることがある。
令和の時代を生きる私からみると所謂エログロナンセンスだけど今のドラマよりもずっと面白い。
江戸の町の埃っぽさや薄汚れた俳優が着ている垢じみて日に焼けた擦りきれた着物。
主人公もゲスだったりだらしなかったり自己中心的だけど、情がある。
冒頭の文章はそんな時代を少しだけ羨ましく思って書いたものだ。
痣だらけで傷だらけで間違って転んでばかりだけど、生きている人に見える。スクリーンの中の人なのに。所詮俳優が演技しているだけなのに。

コンプライアンスに縛られた今の社会は、傷つく人が最小限になるように、もっと言うと傷つく人がいない世界を目指しているのだろう。少なくとも建前上は。
思ったことをそのまま口に出すと傷つけてしまうかもしれないから、いったん考えてから話しましょう。思い遣りは大事です。
…素晴らしいことだと思う。
誰だって痛いのは嫌だ。傷つくはもっと嫌だ。泣きたくない。
だから今の時代に生きられて幸せね。
なのに、何でだろう。
鏡にうつる私の顔が生きているように見えないのは。

痛みを感じずにして生きているっていえるのかな。

正直に生きているはずなのにどうして私は死んでいるんだろう。

ワタシハイマ、シアワセデス


【正直】

6/2/2024, 10:37:20 AM