よどみ

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月に願いを


 星に願いは託すけど、恒常的な月に願いを託すことって少ない。一過性のようなロマンチックも、可逆性のない刹那的な印象も無いから、かもしれない。織姫と彦星の天の川すら星なんだから。
 恒星とは違い月は太陽の光を反射して光っているのだと言う。もしかすると星に託すよりよっぽとか細くて、叶わなくて、幸せになれない願いを託されているのかもしれない、と思ったら。窓辺から見上げた夜空はあいにくの鈍色雲を敷き詰められていたけれど、かりそめの光を雲から突き通す月の光を集めるようにそっと窓を開けた。ぬるくて塊みたいな風が頬に触れる。五月の終わり、もう夏がそこにいた。

5/26/2024, 1:41:19 PM