狼星

Open App

テーマ:イルミネーション #32

※この物語は#20からの続編です

「すっかりイルミネーションが、家々に飾られる季節になったなぁ~」
僕はローブを深く被るとそう言った。
「いるみねーしょん?」
ミデルの頭にクエスチョンマークが浮かんでいる。
「あぁやって、家に光るサンタクロースの飾りとかを家につけて夜、それらを光らせるんだ」
「イルミネーション!!」
ミデルは想像したのか心を踊らせている。
「みたい? もう少しで光ると思うけど…」
ミデルはこちらにすごい勢いで頭を向ける。瞳をキラキラとこちらを見ている。
それはいつになく無邪気で、子供っぽかった。
「待っていよっか」
僕がそう言うと彼女は、首を思いっきり縦に振った。

「まだかなぁ〜」
ミデルは、足をパタパタとさせていた。
僕たちは近くの石垣に腰を下ろし、待っている。
僕たちは流石に人の家の前のイルミネーションを待っているということはやめ、近くの広場にあるクリスマスツリーのイルミネーションを見ることにした。
クリスマスといえば、プレゼントだ。
プレゼント、ミデルはもらったことがあるのだろうか。
「あ! 見て!!」
僕の方をぐいっと引くミデル。
「すごいなぁ…」
僕もミデルの視線の先にあるイルミネーションに目を奪われる。そこには赤、ピンク、青、黄色、緑、紫と色々な光が暗い夜の広場を照らしていた。
「すごい…。すごいよ! ラクラ!」
僕はそう呼ばれて思った。
そうだ、今の僕は王の後継ぎのラック・クラームじゃない。ミデルの横にいる僕は、ラクラ・クームなんだ。
無邪気にはしゃいだって、誰にも叱られることはない。
自由なんだって。
イルミネーションの光は、夜の暗さを彩った。
僕だってこのイルミネーションのように光を放って見せるんだ。

12/14/2022, 1:10:19 PM