ななしのみさき

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 ブランコに乗ってるとき、私の心は落ち着く。
 両親が喧嘩した日も、叱られた日も、無視された日も、母から打たれた日も、罵倒された日も、陰口を叩かれた日も、私は近所の公園のブランコに座っていた。
 流れる雲を見ながら、「私は悪くない」と心の言い続けた。
 今も変わらない習慣。何か辛いことがあると公園に立ち寄る。ブランコに座ってぼーっとする時が少し落ち着く。
「栗原さん。何してるんですか」相棒で大学の先輩の小塚さんが公園に来た。珍しく休みなのにお出かけ用の服に着替えていた。いつもならボサボサの髪も、今日は整えてあった。
「小塚さん?なにか分かったんですか?」
「いえ。ただ、栗原さんがお腹空いたかなと思いまして。」彼の推測は、悔しくもあっていて、私はお腹が空いていた。
「お腹空きました。誰かさんのせいで朝食べてないので」あたっていたのが悔しかったので、今朝のことをいじってあげた。すると小塚さんは、顔を真っ赤にした。
「く、栗原さんだって乗り気だったじゃないですか。」
「その気にさせたのは先輩ですよー」とブランコを前後にふった。少し早く、高く、ブランコが振れた。
「はいはい。そんなことより、何食べますか?繁忙期も開けたので、久しぶりに外食でも行きません?」少し着飾った服に納得ができた。
「行きたい!…ですけど、今はちょっと…」彼がキレイな格好をしていても、私が普段着のパーカーでは外食にはいけない。同僚に会ったら大変だ。
「そうですか…では外食は夜にでも。」そう提案する彼に、私は提案をした。
「ねぇ小塚さん。私、小塚さんのおにぎりが食べたいです。ここで」
「ここでですか?」
「はい。ここで」
「分かりました。栗原さんも手伝ってくださいね」
「分かりました。」



 彼の持っている赤色の小さな箱には、気づかないふりをした。

2/1/2023, 3:26:27 PM