「桜散る」
春になった。
桜の木々は、桃色の絨毯を広げた。
散りばめられた花びらの一枚一枚が私の記憶に思えた。
たくさんの回想の欠片が道を抽象で覆い、コンクリートを私の視界から遠ざけてくれた。
でも、歩く私は知っている。
この桜並木は途切れる。アーチをくぐればすぐに具体の上を歩く日がくる。
思春期の無限の可能性や、全能感に満たされているこの淡いレッドカーペットは、決して私をカンヌへ連れていってはくれない。
進路は枝分かれしていて、どれか選ばないといけない。
それなのに、どの枝も茨だらけで、躊躇する。
選ばない枝は剪定しないといけない。
それが怖い。選べない。間引けない。
まだ蕾のままいたい。どんな花を咲かせるか、空想しているままいたい。
でも、選ばねば枯れる。みんなは選んだ。
17歳の私。思い出に縋る私。
選びきれず、花びらの束の上に立ち尽くしていた青臭い葉桜の私だ。
4/18/2024, 12:43:40 AM