Seaside cafe with cloudy sky

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【澄んだ瞳】

◀◀【これまでずっと】からの続きです◀◀

それから数時間後 ―― アランは大きな総合病院の緊急外来の待合室で検査結果を待っていた。運び込んだ病人 ―― マルテッロという名の男は先ほどようやくCT検査を終えたばかりで、いまだ意識がはっきりしない状態だ。覗き窓から力なく横たわるマルテッロの様子を静かに眺めていると、バタバタと駆け足でこちらへ近づいてくる足音が耳に届いた。そちらに目をやれば、思った通りの人物だった。
「ヴィルケくん、こっちだ」
待合室の手前まで来て立ち止まり、キョロキョロと辺りを見渡すひよこ頭に手を挙げて呼びかける。別れ際にお互い名のり合って名刺をもらい、彼の名前を知った。エルンスト・ヴィルケ。呼ばれたひよこ頭はアランを見つけるやいなや傍らへと、また駆け足で急いでやって来た。元気な若者だなあ。
「ア ―― や、ジュノー、さん。遅くなってしまって……すみません」
並ぶとアランよりも少し目線が高い。色素の薄い髪と同じく透明感のある水色の澄んだ瞳を翳らせて、真摯な面持ちで詫びる彼には自然と好感が湧いてくる。
「僕のメッセージを見て飛んできたみたいだね。かなり早い到着だったよ、もう一時間くらいはかかると予想していたのに」
まさか納品をほっぽり出してきたんじゃないだろうね?ヴィルケの生真面目な態度をほぐそうと、冗談めかした言葉で続けた。そんなアランの気遣いがどうやら相手に通じたようで、はにかんだ笑みを浮かべたヴィルケは作業着の胸ポケットからサイン済みの受領書を取り出して見せてくれた。
「やあ、これはお見事。アクシデントの中で立派にやり遂げたね、ブラボー!」
無事任務完了のなによりの証を目にし、アランはねぎらいの笑みをたたえてヴィルケの二の腕に優しく触れ、健気に健闘した彼を慰撫した。するとヴィルケは真っ赤な顔で息を呑み、穴が空いてしまうほど強くアランを凝視したまま、込み上げてきた気持ちが口から溢れ出すがごとくにこう告げたのだった。
「―― アラン……ジュノーさん、僕……あなたを、知っています!」

▶▶またどこかのお題へ続く予定です▶▶

7/30/2024, 11:14:27 AM