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【胸の鼓動】

「ただいま」
いつもなら聞こえる返事が今日はなかった。靴を脱ぎ、手洗いをして、部屋を進んでいく。リビングにはいなかった。ということは、寝室か?
寝室のドアを開けると、冷房がきいた部屋で、布団を被って寝ていた。2人で寝るために買った、少し大きめのベッド。1人で寝ているはずの彼は、べっどの端に寝ていて、奥があいていた。私がいつも寝ている場所。私のためにスペースを空けてくれているのが、とても嬉しかった。
寝室のドアを一度締め、私は彼を起こさないように寝る準備をした。

部屋へ戻ると、少し冷えすぎた部屋でぐっすりと寝ている彼。私は彼が空けてくれた奥のスペースへと移動し横になる。いつも忙しく、職場では怖い上司といえば、1番に名前があがるほど厳しい彼。いま私の目の前には、少し幼く見えるきれいな寝顔だった。
部屋が寒く、彼にくっついてみる。すると寝ているはずなのに、いつものように腕の中に閉じ込められる。
規則正しい寝息と彼の胸の鼓動を聞きながら、私もゆっくりと眠りについた。

9/9/2023, 6:52:55 AM