NoName

Open App

【はなればなれ】


「おはよう」
右隣のコに挨拶する。もう何回目の朝だろう。あと何回「おはよう」が言えるのだろう。
みんなでいる時から、右隣のコとはよく話した。お喋りなそのコは、いつも何かしら呟いていて、他のコに「うるさい」って言われることもしょっちゅうだった。でも「喋らないとムズムズするんだ」と言ってやめなかった。
「うーん、おはよう。あれ、右にいたコ、いなくなっちゃった」
右隣のコが寝ている暗いうちに、その右にいたコはいなくなった。
「うん、夜のうちにね」
「なんか言ってた?」
「なんにも」
「冷たいなぁ。起こしてくれてもよかったと思わない?」
「いきなりだったし。まさか夜のうちになんて思わないし」
「そっかー」
「うん」
本当は「バイバイ、またね」って言ってくれたんだ。でもそれを言ったらきっと羨ましがって、ずっと「いいな〜」って言われそうだから、黙ってた。
みんな、はなればなれになってどこに行くのか本当は知らなかったし、でも「またね」なんてないことは知ってた。
「とうとう二人きりになっちゃったね」
「たくさんいたのにね」
「まあしょうがないよ」
「どっちが先かな」
「一緒に……とかないかな」
「一緒! ならいいねえ」

11/17/2023, 1:02:32 AM