結局僕は彼女の手をとることはしなかった。
彼女はきっと寂しくて哀しい女なのだと思う。
誰かのぬくもりがないと生きている確信が持てない。その誰かのぬくもりを得るために自分の身体を対価としてさし出す。自分の心と躰に罰を受けるように。
初めて会った日に彼女からすぐホテルに行こうと言われた時、焦ったのは僕の方だ。
住むところがないというから、迷ったけどベッドを貸した。お付き合いをすることを条件に、彼女としてなら愛し合うこともした。
その度彼女は安心して眠り涙を流して起きるのだった。痛々しくて守りたかった。優しくすればするほど、彼女はどうしていいのかわからないというようにもがき苦しんだ。
僕は真剣に彼女の支えになりたいと思っていたけど、彼女はそれを望んではいなかった。
半年くらいして、彼女は再び街と男と夜の間を彷徨うようになり、僕の元を去った。そのあと二度程僕の元に現れたけど、二度目の時は既に僕には大切な人がいて、彼女の手をふり払うように断ち切ってしまった。
街で似た格好の女の人を見かけるたび、もしあの時、僕が2回目の彼女の手をしっかり掴んでいたら、その時は彼女も僕の手を握り返してくれたのだろうか。後悔ではない。ただ考えても仕方のないことが頭の中で堂々めぐりするのだった。
お題「手を取り合って」
7/15/2024, 3:25:40 AM