現実逃避は僕の十八番だ
もう一人の都合の良い僕を自分のなかに作り言い訳をする
「何だこの絵変じゃね」
「え〜なになに〜?ホントだ〜下手〜」
嘲笑混じりにそんな言葉が僕の後ろの席の女子に投げかけられる
「は、はは……そうだね、下手…だね」
後方からひねり出したかの様な小さな声が聞こえてくる
(助けたいなんて考えるなよ僕、陰キャのくせに変に首を突っ込むからいけないんだよ)
もう一人の都合のいい僕が今日も現実を逃避させてくる
後ろの席の女子は川井
川井がこんな絡まれ方をしてるのには理由がある
数日前、女子グループカースト上位勢に虐められていた女子を庇い立てするような行動をとったからだ、俺と同じ陰キャのくせに
(僕にはどうする事も出来ないだろ、可哀想だが自業自得だ)
俺と川井は陰キャ同士でアニメや漫画が好き、というオタク趣味まで一緒ということもあり仲がよい
話を聞くに川井は漫画が大好きで将来は絵を書く仕事をしたいらしいその為に学校でも絵を描いているんだとか
絵を見ようとすると恥ずかしがって叩いてくる
「俺がもっとイカした感じに描いてやるよ」
「いやっもっと酷くなってるやん」
後ろで男女の声が大きさを増し、僕の精神を脅かす
少し、首をズラし後ろに目線だけ送る
川井は顔を赤らめ下を向いていて、その周りを取り囲むようにして数人のカースト上位の男女が騒いでいる
川井と少し目が合い、急いで前を向く
(僕、仕方ないことさ、川井みたいに首を突っ込んで次の標的になりたくはないだろ?)
都合の良い言い訳ばかりを並べるもう一人の僕
僕はこの僕が嫌いだいつも言い訳を作り諭すように僕に言う
──本当は気づいている
あの時、虐められていた女子を助ようとした川井は何も間違っちゃいない、純粋に尊敬すらした
僕もあんなふうになりたいと
(そうだ、川井は僕の友達だ!尊敬する人だ!)
好きなものを侮辱された川井の気持ちはどんなものだろうきっと僕の様な夢のない人間では考えられない辛さな筈だ!
もう一人の都合の良い僕は今でも考え直した方が良いとやめたほうが良いと諭す
でも、もうこんな自分は嫌なんだと邪念を振り祓い僕は勢い良く席を立って後ろを向く
勢い立つ僕を「何だこいつ?」という顔で見る輩と驚き顔を隠せない川井と目が合う
(ヤバい、頭が真っ白だパニックになりそう、でも最初からずっと言いたかったことがある、コレだけはいわなきゃっ!)
「かっ川井の絵は──可愛いだろっ!」
僕はこの瞬間、現実逃避を脱却する一歩を踏み出した
2/27/2026, 2:38:32 PM